投稿者:ジュリア  投稿日:2019年 9月24日(火)19時52分19秒 2019-09-23
メルカリでの「部落地名総鑑」出品事件が問うもの


「全国部落調査」復刻版裁判の第8回弁論手続が9月11日、東京地裁で開かれ、原告・解放同盟の弁護団から準備書面が提出された。今回の準備書面では、示現舎がばらまいた同和地区情報により広範な二次被害が生じている現実などが提起された。


メルカリで「復刻版」が3冊出品
 今年1月~3月にかけて、インターネット上のフリーマッケである「メルカリ」において、本件出版物である『復刻 全国部落調査』そのものを印刷した出版物が3冊販売されるという事件が発生した。

唐津市の職員が当該出品を発見、佐賀県が「メルカリ」本社に対して取引中止を要請し、本社が出品を取り下げた。しかし、その間、すでに3冊落札されていた。

出品者は高校生 本人は反省・県へ
出品者は佐賀県内の高校生3年生(出品当時)であった。

出品者は今年3月22日、ネットニュースで自分の販売行為が記事で掲載され、社会的に大きな問題になっていることに驚き、佐賀県に連絡。3月29日に県職員と面談し、追加製本した2冊を同課に引き渡し、陳謝した。

出品者は高校1年生の時、現代社会の授業で部落問題についてふれたことをきっかけに、示現舎のサイトを閲覧。全国の被差別部落の所在地などが掲載されており、自分も所持しておきたいと2017年2月から3月にかけて『復刻版 全国部落調査』のデーターを3冊印刷して製本。

友人に見せたがあまり反応がなく、その後、放置していた。

高3になり、部屋の整理をきっかけに2019年1月に最初の1冊をメルカリに出品したら5555円という高額で売れたことに驚き、続いて残りの2冊も出品し、3500円、5000円で落札された。短期間でこれだけ高額で売れて需要があるのだと実感し、追加で2冊を製本して出品しようとしたころで、販売中止になった。



◆「売れれば良い」と安易な気持ちで出品
3月下旬、佐賀県が本人と面会、事情聴取をおこなった。

出品者は部落について中学生の時に学習した記憶はある。高校1年生の時、社会の授業で先生が部落問題について話したが、「あまり詳しいことについては触れられなかったのでもっと知りたい」と思い、ネットで検索したら示現舎のブログや全国の部落の地名が書かれたサイト、『復刻 全国部落調査』のPDFデータを配布するサイトを見た。

出品した高校生は「部落地名総鑑の原点」とタイトルが表紙に書かれてあったが、「部落地名総鑑」が就職差別や結婚差別などに悪用されてきたものであるとは知らなかったという。

示現舎のサイトをみて「復刻版」が出版禁止になっていることは知っていたが、原告の解放同盟が出している情報については知らなかったとのこと。

本人は「出品時に部落差別につながるとい認識はなかった。希少な書籍のようなので売れればいいなくらいの安易な気持ちだった」と応えた。

  ◆事件の背景・問題点と課題
①示現舎のバラマキの結果
今回の事件は、示現舎が裁判所から出版禁止の仮処分決定を受けた後、開き直り、『復刻版 全国部落調査』のデーターをPDFで無料公開し、拡散を煽り、キンドル版での作成方法までを指南し扇動した結果、生じた事件である。

②問われる学校同和教育
今回の出品者は現役の高校生であったことは、これまでの学校同和教育のあり方が問われている事件でもある。

本人は社会の授業などで、部落差別については学習した記憶はあるが「あまり詳しいことには触れられなかった」「出品時に部落差別につながるとは思わなかった」と言っていた。

過去、そして現在、どれだけの人が身元調査により結婚差別や就職差別に苦しめられてきたのか、「部落差別が現存する」社会において「部落地名総鑑」がいかに危険なものであるのか「差別の現実認識」が欠落していた。

「顔の見える」部落問題学習、「差別の現実から深く学ぶ」学習が求められている。

③「部落地名総鑑」の売買の禁止
「部落地名総鑑」の売買を可能にしていたメルカリの責任が問われている。唐津市の職員から報告を受けて、佐賀県はすぐにメルカリへ販売中止を求める連絡を名何度も入れたが無視されていた。最終的に2月4日、佐賀県の部長名による「内容証明」郵便でメルカリ本社へ送付して初めて応答があり、販売中止となった。

今後、「部落地名総鑑」(『復刻  全国部落調査』)などが通販サイト・オークションサイトで出品禁止されるよう、業界団体あげてのガイドライン・ルール作り、法整備が求められている。

④政府、法務省の課題
今年5月22日、解放同盟と法務省との政府交渉がおこなわれた。そこでは、落札された3冊(『復刻 全国部落調査』)を法務省が回収したのかが問われた。法務省は回収しておらず、メルカリにも回収依頼の要請をおこなっていないことが明らかとなった。

1975年に発覚した「部落地名総鑑」事件では、法務省は10年間かけて663冊を回収し、すべて焼却処分した。今回も購入者は企業や探偵事務所などの可能性もあり、それらが部落出身者の差別身元調査に悪用される危険性が高いために、早急に回収するべきだとの声が相次いだ。

メルカリは、登録した出品者、購入者はすべて会員であり、購入者の名前や住所等の個人情報を把握している。そのため誰が購入したのかは自明のことなのである。裁判所から出版禁止の仮処分が出されている本であるにも関わらず、法務省が放置している現状は許されない。

メルカリでの「部落地名総鑑」出品事件は、まだ終わっていない。

ここで問われた課題をしっかりと受け止め、「部落差別解消推進法」の具体化に向けて、プラットホーム事業者の社会的責任や法の不備、学校同和教育の充実、差別禁止法、人権侵害救済法の必要性も含めて議論していく必要がある。

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