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東京の街に「中国資本の激安大盛り中華料理店」が増え続けている事情  

投稿者:ジュリア  投稿日:2022年 2月10日(木)22時08分7秒 東京の街に「中国資本の激安大盛り中華料理店」が増え続けている事情

NEWSポストセブン




0.香港証券取引所に上場もする中国最大の火鍋チェーンと言われる「海底撈火鍋」が2021年11月、世界で展開する1600店舗のうち300店舗を閉鎖すると発表して大きな話題を集めた。

 池袋や新宿など日本の店舗はまだ閉じていないが、積極的に出店させてきた巨大中国企業でも新型コロナウイルスの影響は免れないのかと話題になった。

 巨大チェーン中華料理が苦境にある一方、コロナ禍と自粛に疲弊する日本の街には、なぜか中国資本による新たな形態の中華料理店が増え続けている。

 俳人で著作家の日野百草氏が、急増する中華料理店をとりまく事情を探った。




1.「空きが出たらだいたい中国の人が入るね、コロナになってからは特に」

 豊島区を中心に賃貸不動業を手掛ける営業マンに話を伺う。

 池袋、大塚、巣鴨といった山手線沿線とあって近年はテナント賃貸が大半を占めるという。

 あくまで彼のケースであり個々別の事情、業態により様々だが、2020年のコロナ禍に増えた中国資本とその関係者、相談も含めると日本人より多くなったと語る。

「条件や場所にもよるけど、中国人は言い値でテナントに入ってくれる。

 とくに居抜きなら文句は言わないよ」

 池袋もまた時間の問題だったか――筆者は彼に話を伺う前に池袋を歩いたが、コロナ禍で従来の日本人の店舗、とくに飲食店は疲弊しているのがわかる。



 かつて池袋は新宿歌舞伎町の次に「夜の街」バッシングを被った。

 なるほど中華料理店が増えている。それも、これまでのいわゆる中華街的な高級および中流クラスではなく中国本土と同じような大衆店、定食屋の類だ。

 もう皆さんお馴染みかもしれない、それほどまでにコロナ禍に増え続けている。

 5、6年前にも中華料理屋が増えたのだが、それともまた違う新たな「増殖」である。

「大陸の中国人だけど台湾料理と名乗ったりね。味つけが濃いので私は好みだけど」

 筆者も今回のことも兼ね、池袋に限らず都内各所で新たに出店した中華料理屋に入ってみたが確かに味つけは濃い。

 そして量も多い。店内はシンプルな定食のみかバイキングが主流、また短期間で店名をコロコロ変える場合もある。

 それにしても画一的、これまでの各店独自色豊かな中華料理店とは一線を画する感じだ。激安大盛りは客を集められるかもしれないが客単価は低い。

 人件費はもちろん昨今の物価高、仕入れも考えればそれなりの資金も必要だろうに、いったいどんな中国人が出店しているのか。

 「バックの資本があるね。あとは手引きする会社がある。

 このご時世、言い値で入ってくれるからありがたいけど、経営者自体が中国人の間でコロコロ変わったりしてる。

 それ以上はわからないね、契約する人のお金がどこから出てるか、なんてこっちに関係ないし」






2.愛国心が強い「変な中国人」


 先に触れた通り2020年、筆者は最初の緊急事態宣言下の新宿歌舞伎町で廃業店舗が中国人経営者の店になる経過を取材している。

 その時も「言い値で、面倒なことを言わない」とテナント仲介会社は語っていた。

 なにしろ当時は補償も心もとなく(いわゆる協力金第1弾)緊急事態宣言による撤退や廃業で疲弊していた時期、もう忘れた人もいるだろうが、小池百合子東京都知事まで「夜の街」バッシングを煽るような言動で物議を醸していた。

 経験のない疫禍とはいえ都の初動は最悪だった。これをきっかけに外国人、とくに中国資本に変わった店もある。

 旧コマ周辺の一等地すら派手な中国系の店が増えた。

「まあ池袋に限らず都内あちこち増え続けてますね。とくに池袋は中華街計画もあったので中国人には馴染みやすいんでしょう」

 もう10年以上も前の話だが、インバウンド需要を目的に池袋では「中華街」を作ろうという話が持ち上がり、当初の計画通りの規模とはいかなかったが「池袋リトルチャイナ」と認知されるようになった。

 なので今さら感もあり筆者は池袋に触れて来なかったのだが、コロナ禍に雨後の筍のように増殖する中華系資本の店舗はその10年以上前のそれともまた違う。まるで何かの指示があるかのように一斉に、突如といった感がある。

 次に池袋ではないが都内で長く中華雑貨店を営む在日中国人店主の話、文章化するにあたり一部の日本語をこちらで補っている。

「わからない。私たちが来た当時とは違う人たちです。若い人が多いけど家族で雇われて日本で店を開くと聞いてます。交流もありません」

 日本の在留中国人は2020年末の時点で77万8112人(出入国在留管理庁)と、いまや福井県や高知県の人口より多い。

 同胞とはいえすべてと交流があるわけでもないし、あくまで彼の周りの話でしかないが別の都下の中華料理店の華人(日本国籍をとった中国人)も「よくわからない中国人が増えた」と笑いながら話していた。

 コロナ禍に帰国、あるいは他国への移住も含め、在留中国人そのものは約4万人減ったにも関わらずだ。

「中国のほうが景気もいいし仕事も多い。コロナも気にせず暮らせるからと帰った人は多いです」

 確かに、日本にいる中国人もすっかり様子が変わったように思う。

 1990年代までは貧しい出稼ぎ中国人ばかりで密航者も多かった。

 いわゆる「蛇頭」が暴れていたころだろうか。2000年代に入るとIT大国として徐々に力をつけ、いまやアメリカと太平洋どころか世界の覇権を争う超大国となった。

 主要な太平洋航路は「アメリカと日本」から「アメリカと中国」に変わった。

 これまで日本で稼いだ中国人はすでに帰国した人もいる。

 筆者の知る中国人も仕送りの必要がなくなった、あるいはお金を貯めたと帰った。

 個人的な感想で構わないので、それらと入れ替わりで増えている新たな在留中国人は何が違うのか教えて欲しい。







3.「故郷は好きですが中国共産党は好ましく思っていません。もちろん普段は口にしません。

  日本に渡るしか無かった昔の世代はそうでしょう。天安門事件もありました。

 それにやっぱり貧しかった。でも日本で商売をしようと最近来るような若い中国人や家族は中国共産党を誇りに思うというか、愛国心が強いように思います。

 私からすると、変な中国人なんです」

 中国人のすべてではないが、基本的に中国人は国を信用しない。

 徹底した個人主義であり、中国人は中国人をもっと信用しない。

 ただし利害の一致する相手、もしくはお金をくれる人のためには全力で尽くす。

 案外とアメリカと貿易でうまくやっているのはお互い似た者同士な部分もあるのだろうが、現代の覇権的なグローバリズム経済にはシンプルに適っている。

 それにしても「中国人に愛国心」とは。

「若い世代は中国が途上国だった時代を知りません。

 仕方ないです。古くからの在日同胞も面白いね、と言っています」

 彼も大陸を愛しても中共の支配する国そのものは愛していない。

 反体制とはいかないまでも、いまの50代後半の在留中国人の中には激動の時代に青春を送り、日本に渡らざるをえなかった人がいる。

 「いまどきなのでしょう。幹部の子でもないしコネもないのに中国共産党を心から支持する人たちです。

 (コロナ前から)語学学校にいっぱいいるでしょう」

  その新たな在留中国人、中国資本や協力する日本のブローカーの噂は耳にするが、筆者の知る限りいまだに貧しいままの中国東北部や四川の農村部、漢民族以外の中国籍の人々が来ている。

 もしかして国策で取り組んでいるのではないか。

 「それはわかりません。でも日本人が『そんなことまで』という分野まで細かく取り組んできたのが中国共産党です。

 ありえないとは言えないです。党はとても怖い存在です。一般人でも容赦なく捕まえます」

 もうかなわないよね、お金もってるし

  貿易戦争に連戦連勝、世界の穀物や半導体を金の力で買い占める超大国は貪欲で容赦がない。

 日本の種子や水どころか牛の精子まで手に入れた。海外で当たり前のように見かける和食店の多くも中国資本で、いまや日本人を雇って大々的に展開している。

 冒頭の不動産営業マンの談。

 「これは前からだけど潰れたコンビニとか使う場合もあるね。居抜きじゃないけど広いし他に使いようもないって物件も多いからさ。

 都心じゃ少ないけど都下や関東あたりには多いでしょう」

 確かに筆者の住む多摩も元コンビニの中華料理店は点在する。

 どこも極めて庶民的で安い。この件でいくつかの店舗にあたってみたが、全員口が堅いのか無視するかやんわり拒否されてしまった。

 これまで中国人のお店の人はおしゃべりで、どこから来たとか身の上話含め聞いてもいないことまで話す人が多い印象がある。

 言い方は難しいがこれまでと違う印象、いずれも話したがらない。

 日本人との接客以外の接触を避けているようにも思える。

 「(中国資本の)オーナーに雇われてるだけだろうね。オーナーは本国にいるかもしれない。

 でも中華料理屋が目立つけど知らないだけで、最近の出店テナントは中国資本多いよ」





4.日本の店でも中国資本というのは最近の傾向、人気の韓国系コスメショップも韓国人でなく中国資本だったりする。

 豊島区の飲食店主に聞くと、このような感想もあった。

 「どうやって利益出してんだろって思うくらい安いんだ。どれも500円とか、凄いとこはその金額でバイキングの食べ放題だよ」

  日本国内でいったいどうやって稼いでいるのか、別に稼ぎがあるのか、先入観抜きにどこか変なのだ。

 先の古くからの在日中国人が不思議がるのも無理はない。

 「コロナでどんどん増えてるね。都心は協力金もらったってペイできないとこばかりだから、日本人には厳しいよ」

  それにしても、まるで何かの号令があったかのように短期間で増えたように思う。

 他国でも中国資本のこうした激安飲食店は多いのだが、コロナ禍の自粛と人命重視に疲弊し続ける日本をよそに、中国はさらに世界を席巻するべく攻勢をかけ続けた。

 おかげで貿易では買い勝ち、アメリカと肩を並べるどころか凌ぐ国力で太平洋の支配を確立しようとしている。

 謎の中国料理店の増殖という小さな話に思うかもしれないが、小さな事すら全力なのが中国という大国であることはこれまでの事案の数々が証明している。

 「こんなことまで国がするのか」というのが中国だ。

 一連のカジノなどの統合型リゾートに関する事件でもその「きめ細やかな」手口とそれに籠絡される日本側の実体があぶり出されたことは記憶に新しい。

 「でも貸さないわけにもいかないしね、土地だってそうだけど、欲しい人は金さえ出せば誰でも借りられるし買えるのが日本だからさ。

 コロナでテナント、厳しいからね」

 中国人は固定資産税を払いたくないので日本の土地を永続的に持つなんて不合理なことはしたくない。

 その代わり中国国内のインターネットで日本の土地を短期間に売買している。

 都心の異常な値上がりは中国国内における日本の土地売買にも起因するのだが、日本に行ったこともない、現地を見てもいない中国人が投機目的で日本の土地をゲームよろしく売買している。

 中国の名門大学の学生や若手IT経営者などはそれこそゲーム感覚で日本の土地を売り買いしている。

 「日本人は北京や上海の土地でそれできないからね」

  条件や面積にもよるができる国のほうが少ない。許しているのは日本政府だ。

 日本人は中国の土地は買えない。借りるのすら規制が厳しく面倒だ。不条理だが中国のほうが世界的には当たり前の対応である。

 国際常識からすれば日本のほうが「間抜け」呼ばわりである。

 「政府が許してるんだから仕方ない。もうかなわないよね、お金もってるし。

 日本もコロナ気にせず経済まわしてりゃね」

 人命の問題なので致し方ないとはいえ一理ある。もちろん本稿は中国や在留中国人の方を過度に煽るためのものではない。

 ただ人権意識が高い国のほうが損、という昨今、それにつけこまれることも事実である。

 目に見えて新たな中国コミュニティが形成され、これまでと違う資本や意図も含めた正体不明の影が見え隠れする。

 もはや世界の超大国である中国、3兆円以上のODAを止めた2018年の時と同様に、日本の安全保障という点でもこれまでのつきあい方を考え直す機会が訪れている。

 ちょうど2022年で日中国交正常化50周年、対等な大国として守るべきものは守り、日本も毅然と対峙することこそ共生に繋がる。

 そのほうが日本で商売をしたい「だけ」の中国人にとっても安心のはずだ。

 中国は日本の土地どころかあらゆるものを金で買える、借りられるのに、日本は中国の土地を買えない、借りるにも規制まみれというのは不平等条約のようなものだと思う。

 2021年、ようやく外資の土地取引規制法が成立したが極めて特殊な場所だけに限定したザル法である。

 共生とは対等であるからこそ成り立つと考える。ゆずること、おもねることを共生とは言わない。

 コロナ禍に疲弊する日本の小売りに替わって増殖する新たな中国資本の店舗、中華料理店はその一例だが、さらに加速するであろうその勢い、注視していく必要があるように思う。







【プロフィール】


 日野百草(ひの・ひゃくそう)(本名 上崎 洋一 )ジャーナリスト、著述家、俳人。

 1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。

 社会問題やと生命の倫理の他、日本の「食の安全保障」などロジスティクスに関するルポルタージュも手掛ける。
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